9)からだの中で薬はどうなるのですか

からだの中で薬はどうなるのですか

 薬がその働きを現すためには、体内に吸収され効果を示す部位へ到達することが必要です。 薬の吸収は、投与経路(内服、外用、注射など)によって、また薬の性質によって様々です。  内服薬の場合、大部分は小腸から吸収され、血液、リンパの流れによって全身に運ばれます。吸収された薬は体内にほぼ均等に移行すると考えられますが、脂肪に溶けやすい薬は、脂肪組織や脂肪の多い神経系に比較的よく集まります。
 内服すると胃酸で分解されてしまったり、ある種の薬は胃に負担をかけて胃を荒らす場合もあり、このようなときには坐剤や注射剤が投与されます。
  坐剤は直腸下部の粘膜から吸収され、胃などの消化管を通らず血中へ入りますが、一部の坐薬では腸管循環により消化管の副作用も現われることがあります。 注射剤は直接血液中に薬物を移行させることができます。そのほか局所的な作用を目的として、皮膚、目、耳、膣等に外用として用いる薬も数多くあり、病気の状態により、投与経路や性質によって薬は使い分けられているのです。 
 薬が吸収されて生体内に入り薬理作用を生ずると同時に、生体内では薬を変化させて体外に排泄しようとします。この変化は薬に限らず生体内での有害物質にもあてはまり、広い意味での解毒作用といえます。ある種薬の場合はこの体内変化をしたものが薬効を示す場合もあります。 
 一般に薬物が治療効果を現した後、代謝を受けて体外へ排泄されるときは水に溶けやすい物質に変えられ、尿中へ運ばれます。ある種の薬を飲むと尿に色がつくことがあります。尿中以外にも、造血剤や下痢止めの薬などは腸管へ排泄され、大便に混じり便を黒変させることもあります。薬物はこれら以外にも呼気とか睡液、汗などにも排泄されることが知られています。また、乳腺へ移行し乳汁中に排泄される薬物も知られており、授乳期の母親には十分注意が必要です。 
 薬の吸収と代謝・排泄のバランスから薬の作用時間が決まります。薬の構造を変えたり製剤上の工夫をしたりして、作用時間を長くする製品も発売されています。しかし、腎臓に障害がある場合は薬物の排泄は遅くなり、通常の量であっても中毒症状になる場合もあります。